顎の骨が足りない・薄い方へ
インプラント治療は、あごの骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける方法です。
そのため、骨の厚みや高さが十分でないと、人工歯根をしっかり固定できず、治療が難しくなることがあります。
このような場合に行うのが「骨造成」という治療です。
骨が足りない部分に人工の骨やご自身の骨を移植し、インプラントを安定させるための骨を補います。
骨が少ないまま治療を進めると、人工歯根が歯ぐきから出るおそれや、上顎洞に達して炎症を起こすおそれがあります。
骨造成は、インプラント治療の安全性を高める大切な治療です。
なぜ骨が足りなくなるのか
検査の結果「骨が少ない」と診断される方は、決して珍しくありません。
あごの骨は、歯の状態や生活習慣、病気の影響などによって、徐々に変化していくことがあります。
骨が減ってしまう原因を知ることで、治療の必要性や今後の予防にもつながります。
原因① 歯周病による骨の吸収
歯周病が進行すると、歯を支えている骨(歯槽骨)が炎症によって溶けていきます。
一度失われた骨は自然に戻ることが難しく、インプラント治療を行う際には骨造成で骨量を補う必要があります。
また、治療後も歯ぐきの健康を維持しなければ、インプラントの周囲に炎症(インプラント周囲炎)が起こるおそれがあります。
原因② 歯を抜いたあとに放置している
歯を抜いたまま長く放置していると、噛む刺激が骨に伝わらなくなります。
すると骨が「使われていない」と判断され、徐々に吸収が進んでしまいます。
放置する期間が長いほど骨の減少は大きくなるため、早めに歯科医院で相談し、適切な時期に治療を進めることが大切です。
原因③ もともと骨が薄い、または加齢による変化
生まれつき骨が薄い方や、加齢によって骨密度が下がる方もいます。
このような場合でも、骨造成を行うことで骨の量を補い、インプラントをしっかり固定できる環境を整えることが可能です。
骨を再生・補うための治療法
あごの骨の状態や不足している範囲によって、行う治療法は異なります。
当院では、症例に応じて「GBR」「ソケットリフト法」「サイナスリフト法」の3つの方法に対応しています。
どの方法が適しているかは、インプラント治療の前に行う精密検査で判断します。
骨が少ない方にも安心して治療を受けていただけるよう、当院では専用設備と清潔な手術環境を整え、安全性を重視した治療を行っています。
GBR(骨誘導再生法)
GBR法は、インプラントを安定して支えるための骨を再生させる治療法です。
骨の幅や高さが不足している部分に人工骨を補い、その上を特殊な膜(メンブレン)で覆うことで、骨が再生しやすい空間を確保します。
膜が歯ぐきの組織の侵入を防ぐことで、時間をかけて内部で新しい骨が形成されていきます。
十分な骨量が確保されると、インプラントをしっかり固定できる安定した土台を整えることができます。
ソケットリフト法
ソケットリフト法は、上あごの奥歯の骨がやや薄い場合に行う骨造成法です。
インプラントを埋め込む位置から直接アプローチし、上顎洞の底を少し押し上げて、その空間に骨補填材を入れ、骨の厚みを確保します。
上顎洞を大きく開ける必要がないため、手術による負担が少なく、治りも比較的早いのが特徴です。
ただし、骨を増やせる量には限度があるため、もともと一定の骨量が残っている場合に適した方法です。
上あごの奥歯にインプラントを検討されている方に、よく用いられる治療法のひとつです。
サイナスリフト法
(上顎洞底拳上術)
サイナスリフト法は、上あごの骨が大きく吸収し、インプラントを支えるための骨が少ない場合に行う治療法です。
上顎洞の側面からアプローチし、その空間に人工骨やご自身の骨を移植して、時間をかけて骨を再生させていきます。
骨を増やせる範囲が広く、重度の骨不足にも対応できるのが特徴です。
骨の安定を待ってからインプラントを埋め込む場合と、骨移植と同時に行う場合があり、骨の状態に合わせて最適な方法を選択します。
骨造成の痛みや体への
負担について
骨造成は局所麻酔を使用して行うため、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
処置後は、骨や歯ぐきが回復する過程で一時的に腫れや痛みが出ることがありますが、多くの場合は2〜3日ほどで落ち着いていきます。
処方される痛み止めや抗生剤などのお薬を指示どおりに服用することで、症状をやわらげることができます。
ただし、1〜2週間経っても痛みや腫れが続く場合は、感染などの可能性もあるため、自己判断せず早めに当院へご連絡ください。
手術そのものの負担は大きくなく、多くの方が術後すぐに普段どおりの生活を送られています。
骨造成の治療時期と
治療までの流れ
骨造成を行う時期や治癒までの期間は、治療方法や骨の状態によって変わります。
・GBR(骨誘導再生法)/ソケットリフト法
比較的骨の量がある場合に適用され、インプラント埋入と同時に行うことが多い方法です。
治癒期間の目安は、GBRで約3ヶ月、ソケットリフトで約3〜6ヶ月です。
・サイナスリフト法(上顎洞底挙上術)
骨が大きく吸収している場合に行う方法で、まず骨をつくる手術を先に行います。骨造成の治癒には6〜9ヶ月ほどかかり、その後にインプラントを埋め込みます。インプラント埋入後はさらに約3ヶ月の安定期間を設けます。
治療期間や手順は、患者様の骨の状態によって異なります。当院では、事前に歯科用CTなどで詳しく検査を行い、無理のない治療計画を立てています。
